霜柱標本室

佐倉誰と仲井澪の公開交換日記です。日記と短歌です。最低ひと月に一往復を目安に更新します。

2024.1.23〜2024.3.10

佐倉誰

2024.1.23

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。元旦は能登地震と全く関係なく沈鬱な空気でしたがおせちを食べて、腕と箸を伸ばせるだけ伸ばして黒豆をつまみながら「遠くの豆やなますを」(a.k.a服部真里子)と内心つぶやいていました。あんまり面白くないのでここで供養しますね。

すこし前に髪の毛を男の子みたいなベリーショートにしました。耳が寒くてかないません。今日一緒に歩いていた人がエレベーターを待つ時間に私の横顔をしげしげ眺めて「外国人みたい」と褒める意味合いで言ってくださったのが印象深く、複雑でおもはゆかったです。

 

CM

里十井円さんからのお誘いでロリィタファッションと屈折した自意識に関するエッセイを寄稿しています、最近刊行されたばかりです。

「羽衣手帖」 | 000sat0i000

CM終了

CM後日談

手放した宝物と自分のセクシャリティとそれに伴う後ろめたさを少し開示したので、書く前も最中も提出した後もそれぞれ苦しかったのですけど、かわいい服とかわいい服を着ている女の子を目の前にすると跪きたくなる性分の私だからこそ、書けてよかった文章だと思っています。機会を与えてくださった里十井さんには頭が上がりません。どうもありがとうございました。

 

献血したいと長いこと思ってるのですけど一生できる気がしません。私は痛苦の感受性が高い痛がりの怖がりで、普通の採血でもかなり苦手なので太めの針を体に刺したまましばらくじっとしているのは難易度が高いです。貧血にもなりやすいし。ただ、去年の夏に池袋駅地下の小さい献血会場で会場外の丸椅子に座って、職員の方からいただいたクッキーを食べて、友達から貸してもらった買いたてほやほやの雑誌(歌壇)を読んで友達の採血を待っていた時間は、ものすごくよかった。人のよさそうな職員さんに「暑いところですみません、あいにく中の待合室がいっぱいでして」と謝られながら紙パックの甘すぎるミルクコーヒーとかももらって飲んでました。あなただって暑そうなのに。微妙に薄暗くて蒸し暑くて空気がこもっていてあまり快適な空間とは言えなかったけれど、だからこそというか、小学生に戻ったような心地よい無力感といただいたものへの愛でいっぱいになって、なんだかすごく温泉みたいな良い時間でした。献血会場の案内の人を街中で見かけるたびに思い出します。それからは特に「献血したいなあ」の気持ちをやんわり抱えて過ごしているので、向いてないとしても死ぬまでに一度は。


前々回の弊日記(弊日記?)に載せた仲井澪の短歌がajiroでの起き短イベントで我妻俊樹に紹介されていて嬉しかったです、嬉しかったですね。飛び上がっちゃった。

サンタさんスケートリンクにある広告を全部蛾の写真にしたいの

/仲井澪

いい歌。好きな歌の読みを好きな評の人たちから聞けるって本当に贅沢だなあとつくづく思いました。歌会が恋しくなってしまう。

 

甘いものが大好きなんですけど、父方も母方も糖尿病の血筋なのでちょっと目の前が暗いです。あとコーヒーも大好きで、コーヒーが飲めなくなると創作に甚大な支障が出るに違いないので逆流性食道炎も恐れています。健康に気をつけたいです。必死です。

「よいお年を」って年始こそ言うべきじゃないでしょうか。よいお年を。

探偵は移植され名探偵に この世をものともしないのでした

 

仲井澪

2024.3.10
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。とっても遅くなってしまってごめんなさい。
年明けから仕事の都合で2ヶ月間東京近郊にいて、山形の家に戻ってきて1週間です。暖冬の影響もあり、年内はあまり雪が降っていなかったのですが、戻ってきたら3月なのに結構しっかり雪が降っていて驚きました。雪の降るところに住むのは初めてなので、色々と発見があります。住む人たちが早朝に粛々と雪かきをする姿の中には怒りが見える。地面や植物の起伏にそってぼこぼこ、ところどころ地肌を見せて積もっている雪はフォカッチャに似ている。神社の隅には松の葉混じりの雪塊がある。大通りでは煙草の火消しに使われている。今朝は快晴なのにどこからか、ちらちら舞ってきていて、天気雪もあるんだということを知りました。霜柱を見るという目標は叶わずに冬が終わってしまいそうです。

佐倉さんが献血について書いていたことを全く意識しないまま、私は2月に初めて献血をしました。友達が献血関連の仕事(変な書き方になってしまった)をしていて、その友達とご飯に行った次の日に、たまたま献血ルームが目に入ったのでなんとなく吸い込まれてしまいました。血は水分だから、脱水を防ぐために抜く前と抜いた後にたくさん水分を摂るように言われて、紙パックのお茶とアセロラジュースを飲んで、500mlペットボトルの水を貰って帰りました。色々ともてなされるというイメージだけはあったんですが、それは主に水分で、必要なものだったんですね……。どうやら日本一狭い献血ルームだったらしく、私の縦幅と横幅でギリギリくらいの、ベッドとも言えない台で手足をグーパーしながら、献血をモチーフとしたゲームのことを妄想したりしていました(街を歩く人々が、人型の血の容れ物として動いていて、頭上に血液型が書かれていて、必要な血を持っている人の頭を掴んで献血ルームにドロップする、など)。献血が趣味みたいなこと言う人って変だなあ……やってみたけど分からなかった、素晴らしく褒められるべきであることは確かなんだろうけど、すごく不思議だなと思いましたよ……。

『羽衣手帖』、拝読しました。全編とても熱がこもっていて、私も自分の服に対する気持ちを語りたくなったし、宇都宮のオリオン通りにあるAngelic Pretty やラフォーレの地下を肩をすくめてぐるぐるしているときのことを思い出しました。佐倉さんの「鏡像に紅」は、服のディテールの描写がすごく巧くて脳が整いました。わがままだけど、もっと読みたい!

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2月はお互い、誕生日おめでとうございました。友達に頂いたレゴの花を昨日組み立てました。生花は生花の、レゴの花にはレゴの花の良さと怖さがあるなと思いました。

花の水まいにち変えなきゃいけないのってよく分からない暖冬の汗